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それからもう1つ、1975年にローマでFAOの世界食料会議が行われました。これは、それまでアメリカが世界の食料が不足している国々にたくさんの食料を供給してきたわけですが、もう自分たちの国では世界中の食料不足をまかなうことができないと宣言し、各国に食料の増産のための努力を呼びかけました。その時に、世界的な規模で食料を備蓄し不足に備えようではないかと決議したわけですが、それは実現されていません。
これまでの食料供給について「緑の革命」を重視する立場からすれば、再び同じようなことが実現するかどうかが問題となりますが、率直なところ俄かに予想も、予言もできません。
しかし食料問題として真に重要な問題は、こうした需給の持続的変動、長期変動ではなく、気象、害虫などによる突発的減産とか、戦争、革命などの社会変動による需要の急増などと行ったことから来る、需給の短期変動−短期的かつ突然として起こる変動−だと思います。20年、30年先の話もさることながら、この種の短期、突発的変動の可能性については、今日、唯今からの課題として即刻計画的備蓄の体制で対処していかねばならないと思います。
そのことを今思い直して、新たな努力をすることがこれからの食料政策として必要であると思います。これはまさに世界全体の責任において解決されるべき問題であると思います。国際的な食料備蓄はある意味において、経済的にはロスが多い、無駄が多い政策です。しかし、これがあたかも国の安定を守る防衛と、軍事費と同じような意味において、安定のための経費としてこれを支えていかなければいけないと思います。
ありがとうございました。

 

ナフシア・ポイ議員(インドネシア)
非常に明確かつ興味深い発表ありがとうございました。
黒田先生の発表に対してコメントがあります。1つはっきりさせなくてはならないことは、我々の国々における食料の不足とは多くの場合、米不足によるものではないということです。
私はここ10年ほど食料問題に関わっています。インドネシアのチモールの例を挙げます。チモールは非常に乾燥した島です。とうもろこしが主食です。しかし、私どもの政策というのは、常に稲作、米を作るということを中心にしてきました。米作りは大変にコストがかかるものです。チモールのように降雨量がごくごくわずかで灌漑をしようにもその水さえもないところではこれは不可能です。
従いまして、1つ明確にしなくてはならないのは、食料の不足が、米の不足と同じではないということであり、また米の不足がそのまま食料不足ではないということで

 

 

 

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